翁 啓恵
台湾・中央研究院院長
1948年8月3日生
台湾嘉義市出身
「糖鎖化学」と呼ばれる分野の世界的な研究者。生物学や医学で重要な複合糖質や糖たんぱく質について、化学合成と酵素反応を組み合わせることで、実現不可能とされた合成法を開発した。その成果はがんや感染症、免疫病などの診断・治療などに幅広く応用され、ワクチン開発や創薬にも道を開いた。
国立台湾大学を卒業後、米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。1989年に米スクリップス研究所の主任教授に就任し、1994年に糖鎖化学の国際賞であるRoy Whistler賞を受賞。2002年に米科学アカデミー会員に選出された。これまで700以上の論文(共著含む)を公表、100以上の特許を取得している。
1991年から99年までは日本の理化学研究所に勤め、糖鎖などの合成研究を推進。その後も理研の研究評価に協力するなど、台湾と日本の交流促進に努めている。
2006年には台湾出身者として初めてノーベル化学賞を受賞した李遠哲氏の後任として、台湾の最高学術研究機関である中央研究院の院長に就任した。最近はクリックケミストリーという比較的簡単な合成法を用い、多種類の化合物を合成する技術やインフルエンザの治療薬、がんワクチンなどの合成にも力を入れている。産学連携にも熱心で、自らベンチャー企業を設立している。