第18回 国際交流会議 アジアの未来

2012年5月24日(木)25日(金)東京都内

学生リポート

経済連携を求める声

伊東 里紗
明治大学 政治経済学部経済学科 4年

 日本で開催される国際会議「アジアの未来」、今年度の各国のプレゼンテーターの口から出るのはそろって「経済連携の強化」であった。1日目は東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局長のスリン・ピッスワン氏の「東南アジアには世界に影響を与えていくという意欲が重要である」と述べた力強いスピーチで始まったが、全体的な話が多く、対照的に2日目は各国のプレゼンターが自国の経済発展にしぼったスピーチが多かったように感じた。
 各プレゼンターからはアジアという地理的に広い枠組みが、EUやアメリカの供給の場となるのではなく、自ら需要の場となって世界経済の表舞台で先頭を切っていくという、気迫を感じた。その手段として最も声が上がったのが先に述べた経済連携の強化である。
 印象に残ったのはマレーシア元首相マハティール・ビン・モハマド氏と、パキスタン外相ヒナ・ラッバーニ・カル氏である。マハティール氏は現在の混迷した社会はアメリカ、ヨーロッパを指し、アジアは比較的安定しているという見解を示した。また、アメリカとの関係を聞かれ「戦争に勝利したとしても繁栄するとは限らない、戦争は人殺しであり、人道的な戦争は存在しない」として批判した。歴史の失敗から学ぶことは良いことだが、アジア内で歴史的敵対関係を継続させることがアジアの経済発展の足かせとなることは明白である。後者のヒナ氏はパキスタンの外相として初来日し、自国の平和への貢献とアジア各国からの理解を求めた。彼女はパキスタンがアフガン戦争にいかに犠牲を払って平和を築こうとしてきたか、平和が保たれなければ信頼関係は生まれず、経済連携も不可能であることを訴え、会場からは拍手が起こった。
 経済連携という大きな目的と、そのための協力を求める声がどのプレゼンテーターからも挙がったことを考えると、民主党が当時の世論の反対を押し切ってTPP参加を表明したのも納得である。それほどまでに経済連携はアジアの共通の目標として多くの人が掲げていた。自らの意見を持つことは重要であるが、そのためには様々な角度の意見を聞く必要がある。日本の評論家ではなく、各国の要人から直接アジアの未来に関して話を聞けることは、大変貴重な経験となった。

以 上

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