アジアの未来

2011年5月26日(木)

学生リポート

「アジアの未来を聞いて」

津島 絵美莉
国際基督教大学 教養学部 3年

東日本大震災のチャリティーイベントとして開催されたアジアの未来2011では、世界経済におけるアジアの重要性と、その経済連携という課題を再認識し、アジア各国の代表のそれぞれの視点からの今後のアジア発展への構想、政策などを実際に耳にし、アジアの発展への課題と今後日本がいかに復興に向かいながらアジア地域において役割を果たしていくべきかを考えさせられた。
各国代表からの講演は多岐にわたったが、アジアの発展に関して最も印象深かったのはスリン・ピッスワンASEAN事務局長の講演であった。氏は、今後のアジアが数カ国間規模の連携ではなく、ASEANを巻き込んでの大規模な地域連携によって一つのコミュニティーとして発展していくというビジョンを力強く述べ、その結果としてアジアがいかにグローバルインスティチューションに貢献できるかが重要であると述べた。これまで欧米諸国が牽引していった世界経済を、今まで付いていく立場にあったアジアがイニシアチブをとっていくという構想は、私には非常に大きな目標であると思えた。中国やインドの目覚ましい発展は目を見張るところではあるが、地域連携を可能にするためにはアジア域内での格差の是正など、長期的に解決しなければならない課題が多いように思われたからだ。しかしスリン氏は、近い将来アジアからIMFの候補者を立てる日が来なければならない、さもなければこのままずっと"European Monopoly"であると続けた。Monopolyは強い言葉のように感じられたが、確かにこれまでの経済体制は欧米と、一部の先進国による独占であったし、アジア地域は欧米に比べ弱い立場にいたのである。この言葉を聞いて、これからのアジアの世界における立ち位置は今まさに従来のものから大きく変わろうとしているし、変えていかなければいけないと強く感じた。私たちアジア人に求められるのは、自国の利益という枠を超えた、アジアという地域としての発展、それによる世界への貢献と、世界を視野に入れた視点であると感じた。
また日本の復興に関して、アメリカン・エンタープライズ政策研究所日本部長のマイケル・オースリン氏は、世界経済が動き続けている中で日本が復興を進めるとともに世界での新たな役割を模索してく必要性を説いた。また韓国のユン・ドクミン氏は、日本の震災以前から見られていた"内向き"な傾向に、今回の震災によって拍車がかかることを懸念し、今こそ外に目を向ける時であると言った。日本が今直面している最大課題は国内復興であり、メディア報道も復興支援と迅速に対応できない政府への批判に集中しているようにも感じられる。しかしこうして日本が国内問題の終息に追われている一方で、オ―スリン氏が述べたように世界経済は止まることはない。日本は短期的な経済的効果よりも長期的な視野を持ち、政府は復興への迅速な対応をとるとともにアジアでどのような役割が果たせるのかを考えていくことは本当に必要だと感じたし、そのためには日本の進む指針をはっきりと示すことのできるリーダーが必要不可欠であると感じた。 今回アジアのリーダーたちの講演を聞き、私はアジアの持つ地域連携への課題を認識すると同時に、今後のアジアの未来へのポテンシャルを感じた。しかし、国内の現状を考えると現日本政府のリーダーシップの欠如はアジアの代表のそれとは完全に相反するものであり、日本の未来がどうなるのかに希望を抱くことは現状では難しいようにも思えた。東日本大震災という大きな難関を乗り越えなければいけない状況に置かれている日本だが、世界経済、アジア経済に後れを取らぬようにするためには何ができるのか、次世代を担う私たちは考えなければならないように思う。

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